奄美大島紀行 終わり

10.6(日) もうほとんどのことを忘れてしまった。 思い出せることには限りがある。覚えられることに限りがあるからか。注意の焦点が知覚を制限するからか。記憶に容量はあるだろうか。記憶力を競う人たちの言うことには、何かと連関させていくことが重要らし…

奄美大島紀行 つづき

10.5 土 目覚ましが鳴って、朝食開始の時刻に目が覚めた。その時刻と朝食とが結び付かなかったため、また寝た。何か大事なことがあった気がしたまま眠るなか、不意に朝食の時間がどこかで設定されていることを思い出して起きた。集合時刻まではあと30分だっ…

じゃり

カステラの下にさ、砂糖じゃりじゃり敷いてあるの好き? 私はあれ嫌なんだ。食べられないことないけど、砂噛んでるみたいでカステラの味とか食感楽しめなくなる。あれどうして敷き詰めることにしたんだろうね。ないやつもあるけど、あるのとないのとで製造元…

奄美大島紀行

去年の2月に友人がマッコウクジラと泳ぎに行った。私はクジラの歌を作って送った。無垢なものだ。友人は見事にクジラと出会えて、興奮のままに買っておいたGoProで撮った映像を送ってくれた。青の中に光線が差して、奥の暗がりがよりぼやけてきたと思うと次…

ぺしゃんこペシミストmist

街灯はおおむね橙色がよい。特に雨の降ったあとで夜更けの散歩などに出ると、いつになくアスファルトが親身に感じられる。あんなに普段素っ気ないくせして、こうなるととろりと曖昧な態度である。それがどうも中途半端に日々を過ごす気質と似通うのか、散歩…

コアラの脳と冷奴

コアラの脳の画像がSNSで流れてきた。ご覧になった方も少なくないだろう。見事にツルツルである。皺のひとつもない。形ばかりが脳で、むしろよく似せてあるとさえ見える。発生学というのか、形態学というのか、流体力学というのか、直進する煙のように、頭蓋…